冷凍倉庫で使われるカプセルフォークリフト特有のバッテリー劣化傾向とは

はじめに

冷凍倉庫で使われるフォークリフトは、バッテリーの使われ方や劣化の進み方に明確な特長があります。特に、冷凍倉庫で多く使用されているカプセルフォークリフトでは、常温倉庫のフォークリフトとは異なる劣化傾向が見られるケースが少なくありません。

現場では、「冷凍倉庫だから仕方ない」「バッテリーは消耗品だから」といった理由で、劣化の早さを環境要因として片付けてしまうことも多いのが実情です。
しかし、実際にバッテリーの状態を計測・確認していくと、劣化の原因は単に温度が低いからではないことが分かってきます。

本記事では、冷凍倉庫で稼働するカプセルフォークリフトのバッテリーに見られる特有の劣化傾向について、構造面・運用面の視点から整理し、なぜそのような劣化が起きるのかを分かりやすく解説します。冷凍倉庫でフォークリフトを所有・管理されている方にとって、今後のバッテリー運用を見直すヒントになれば幸いです。

冷凍倉庫で使われるカプセルフォークリフトは、後半セルから劣化しやすい

フォークリフトに使われている鉛バッテリーは、1つあたり2Vの単セルと呼ばれる小さな電池が、直列につながって構成されています。
例えば、48Vバッテリーの場合は2Vの単セルが24個、80Vバッテリーの場合は2Vの単セルが40個連なって構成されています。

冷凍倉庫で使われるカプセルフォークリフトでは、この複数あるセルのうち、後半側に配置されたセルから劣化が進みやすいという特有の傾向があります。

これは冷凍倉庫の低温環境が直接の原因ではなく、カプセルフォークリフトに搭載されているヒーターの電力供給構造が関係しています。

ヒーターの電力供給構造が後半セルの劣化につながる理由

ヒーターの電力共有構造によるカプセルフォークリフトのバッテリー内部で起きている変化を、順を追って説明します。

ステップ①
後半セルの電力消費が多くなる

カプセルフォークリフトでは、ヒーターの電力が後半側のセルから供給される構造になっています。
そのため、通常の走行や荷役による使用に加えて、ヒーター稼働時の電力消費も後半セルに集中します。

例)80Vの場合
バッテリーは1つ2Vの単セルバッテリー40個が直列で形成されています。
1-40番セルでフォークリフト全体を稼働させ、17-40番セルで+αヒーターを稼働させています。

結果として、後半セルは前半セルに比べて、常に多くの電力を消費する状態が続くことになります。
この電力消費量の差が、セルごとの状態差を生み、後半セルから変化が表れやすくなる原因になります。

ステップ②
セルの状態差は「比重値のばらつき」として現れる

鉛バッテリーでは、セルの健康状態を確認する指標として比重値が使われます。比重値は、セルがどれだけエネルギーを蓄えられているかを判断する目安のひとつです。ここで確認すべきポイントは、比重値そのものの高低ではなく、セルごとのばらつきです。

  • 比重値のばらつきが小さい
    → 各セルの状態が揃っており、安定している状態
  • 比重値のばらつきが大きい
    → 一部のセルだけに負担が集中し、状態が崩れ始めている可能性が高い

カプセルフォークリフトでは、後半セルの使用量が多いため、前半セルとの間で比重値のばらつきが広がりやすくなります。

ステップ③
状態差が広がると、後半セルが劣化の進行を早める「過放電」になる

比重値のばらつきが大きくなった状態で使用を続けると、次に起こりやすくなるのが過放電です。
過放電とは、一部のセルだけが必要以上に電力を使い切ってしまう状態を指し、この状態になると、セルの劣化が急激に進みやすくなります。


特にカプセルフォークリフトでは、「通常の走行・荷役による使用」と「ヒーター稼働による追加の使用」が重なるため、後半セルは過放電に入りやすい状態になります。

ステップ④
過放電が繰り返され、後半セルから劣化が表面化する

後半セルで過放電が繰り返されると、結果として次のような症状が現れてきます。

  • 後半セルの劣化が進行する
  • バッテリー全体のバランスが崩れる
  • 使用時間が短くなる、トラブルが増える

ここまでの流れの整理

下記が、冷凍倉庫で使われるカプセルフォークリフトに見られる特有のバッテリー劣化の流れです。

ヒーターの電力が後半セルから供給され、後半セルの使用量が多くなる
セル間で比重値のばらつきが広がる
後半セルが過放電に入りやすくなる
後半側から劣化が進み、通常車両のバッテリーよりも早期寿命になる

ヒーター搭載カプセルフォークリフトの劣化事例

下記は、実際のヒーター搭載カプセルフォークリフトにおいて確認された、特有のバッテリー劣化傾向を比重値で示したものです。

比重値のグラフを見ると、1番〜16番セルは比重値が高く、十分な容量を保っている一方で、17番〜40番セルでは比重値が低く、容量が低下している状態であることが分かります。

実際に、17番~40番のセルが、通常の稼働に加えてヒーター作動分の電力も供給していたため、他のセルに比べて容量の消耗が早く進みました。
その結果、これらのセルは過放電状態となり、劣化が進行していました。

解決策:カプセルフォークリフトのバッテリー劣化を防ぐ運用ポイント

冷凍倉庫で使われるカプセルフォークリフトでは、バッテリー構造上、後半セルに負荷が集中しやすいことは避けられません。
しかし、運用を見直すことで、後半セルの劣化進行を抑えることは可能です。ここでは、現場ですぐに実践できるポイントを整理します。

解決策①:こまめな充電を心がけ残量コマ数「5コマ以上」を維持する

後半セルの劣化を防ぐうえで、最も重要なのが過放電を起こさせないことです。
そのためにバッテリー残量表示のコマ数管理を徹底し、5コマ以上を維持する運用をしましょう。

解決策②:均等充電で、セル間の状態差をリセットする

後半セルに負荷が集中すると、セルごとの状態差(比重値のばらつき)は少しずつ広がっていきます。この状態差を整える役割を持つのが、均等充電です。

均等充電とは、通常の充電よりも時間をかけて行うことで、セル間の状態を揃えるための充電方法です。
定期的に均等充電を行うことで、下記の効果が期待できます。

  • セル間の状態差を縮める
  • 後半セルだけが先に劣化する状態を防ぐ

※ただし、均等充電のやりすぎはバッテリーへの負担になるため、実施頻度はバッテリー状態に応じた判断が必要です。

まとめ :ポイントは「過放電させない運用」 を継続する

冷凍倉庫で使われるカプセルフォークリフトのバッテリーには、一般的なフォークリフトとは異なる特有の劣化傾向があります。その特徴は、冷凍環境そのものではなく、ヒーターの電力供給構造によって後半セルの使用量が多くなることにあります。

一度劣化が進行したバッテリーは、運用改善によって劣化の進行を緩やかにすることは可能ですが、元の状態に回復させることはできません。
だからこそ、新品時から後半セルを過放電させない運用を行うことが重要になります。

  • こまめな充電で残量5コマ以上を維持する
  • 均等充電でセル間の差を整える

これらを徹底することで、後半セルから劣化が進むリスクを抑え、バッテリー全体の寿命延長につなげることが可能になります。

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